この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ

人生で一番幸せな買い物ってゼクシィじゃない???

無題

最近、彼氏欲しい欲が収まってきた。なんか今のままで幸せだしいっかーみたいな感情に襲われるようになった。そりゃあ世にも美しいイケメンに万が一億が一お付き合いを申し込まれるようなことがあれば土下座をしながら了承したいところだが、そういうかもしれない運転だった人生から、地に足ついてよくよく考えてみた結果、というか色々考えていたところにある出来事があったというのが正しいのかもしれない。

 

 

その日は大学の卒業式だった。女子は袴を身にまとい、どの子もみんな目麗しく華やかであった。そしてこの袴、まあご存知と思うがほとんどの人がレンタルである。このレンタル代が目玉が飛び出るほど高く、つくづくスーツで参加している男子が羨ましい。袴は当日の夕方、大学の構内にある建物で着替えて返却するのだが、私が返却し終え、研究室に戻ろうとしたところで友人に遭遇した。声をかけると何やら元気がなさげだった。どうしたんだろうと思っていると、おもむろに口を開き、

「〇〇くんもう帰っちゃったよ…」

と言ったのだった。

この〇〇くんというのはこの友人が2年近く片思いしていた相手であり、この子が惚気話(この場合片思いなので惚気なのかの定義は曖昧であるが)をしてくると私が発狂して口を塞ぐということをしていた。

この恋は片想いのまま終わってしまい、その一部始終を聞かせてもらったのだが、ここでは割愛させていただく。

 

その子が帰っちゃったと言った瞬間、涙が頬を伝った。私はギョッとして、友人を人気のないところに連れていき話を聞くことにした。

「頑張ったんだよ~」

友人はポロポロと涙を流しながら、好きな人がもう帰宅してしまって、もしかしたらもう会えないかもしれないこと、大学生活の半分もの期間、その人が好きだったことなどを切なそうに語っていた。

 

 

その時、私はこんなに綺麗な涙の流し方があるのかと感動した。こんなことを言うのは友人に対してひどく失礼な気がするが、こんなに綺麗な涙は見たことなかった。

 


嫌がらないで惚気話をきちんと聞いてあげればよかったという後悔と、こんなに誰かを想うなんていうことは私には無理だ、という清々しいあきらめを感じた。

 


自分のこと以上に相手を想うなんて少女漫画の世界だけのフィクションだと思っていた。でも今、確かに、主人公と同じように静かに涙を流す女の子がそこにはいた。

 


人を好きになるってもっと神聖で美しいことだったのだ。

 


そんなこんなで、とりあえず彼氏欲しいと軽々しく口にすることはやめ、イケメンウォッチャーとして日々その活動に邁進することとした。見るだけならタダだからね。